虫刺症
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虫刺症

虫刺されは大変身近な皮膚病で、一般的にはカやノミに刺されたことによって生じる、かゆみの強い赤いブツブツ、という印象があると思います。しかし実際には、蚊やノミ以外にも様々な「虫」がヒトを刺したり、咬みついたり、皮膚から血を吸って被害を与えます。
虫刺されの原因となった虫を調べるには、刺している虫をその場で捕まえて、その種類を確認する必要があります。しかし実際には、刺されている場面を見ていないために原因となった虫が分からないことが多いのです。それどころか、「刺さない虫」を犯人(犯虫?)と思い込んでいる方もおられます。
そこで、人体に被害を与える「虫」の種類や生態、生息地をよく知り、どんな虫がどのような皮膚症状を引き起こすかを知っておくことが大切です。

原因

皮膚炎を引き起こす原因となる主な虫としてはカ、ブユ、アブ、ノミ、トコジラミ、ハチ、ケムシなどの昆虫類、そしてダニ、クモ、ムカデなどの昆虫以外の節足動物が挙げられます。これらのうち、「吸血する虫」としてはカ、ブユ、アブ、ノミ、トコジラミ、ダニ、「刺す虫」としてはハチ、「咬む虫」としてはクモ、ムカデが代表的で、「触れることで皮膚炎をおこす虫」としては有毒のケムシが挙げられます。ここでは日常生活で被害を受けやすい虫刺されについて解説しています。
また、「虫」ではありませんが、クラゲやヒトデ、魚類などの海生動物にも刺すものがあり、皮膚炎を起こすことが知られています。

症状

虫刺されによって生じる症状には、大きく分けると「痛み」と「かゆみ」があります。
痛みには、虫が皮膚を刺したり咬んだりすることによる物理的な痛みと、皮膚に注入される物質の化学的刺激による痛みがあります。代表的なのは、ハチに刺されたりムカデに咬まれたりすることによって皮膚に注入される有毒物質によって激しい痛みを生じる場合です。
かゆみは、皮膚に注入された物質(毒成分や唾液腺物質)に対するアレルギ-反応によって生じます。そして、アレルギー反応には主に即時型(すぐに起こる)反応と遅延型(ゆっくり起こる)反応があります。即時型反応は、虫の刺咬や吸血を受けた直後からかゆみ、発赤、ジンマシンなどが出現し、数時間で軽快する反応です。一方、遅延型反応は、虫の刺咬や吸血を受けた1日~2日後にかゆみ、発赤、ぶつぶつ、水ぶくれなどが出現して、数日~1週間で軽快する、という反応です。
これらのアレルギー反応は、虫に刺された頻度やその人の体質によって症状の現われ方に個人差が大きいのが特徴です。

治療法

軽症であれば市販のかゆみ止め外用薬でもよいですが、赤みや痒みが強い場合は副腎皮質ホルモン(ステロイド)の外用薬が必要です。虫刺されの多くは1~2週間以内に改善します。しかし症状が強い場合は抗ヒスタミン薬やステロイドの内服薬が必要になるので、皮膚科専門医を受診するのがよいでしょう。ただ、これらの治療はあくまで現在の皮膚症状を抑えるのが目的であり、原因となる虫が身近に生息している場合は次々と新たな皮疹が出現する可能性があります。その場合は原因となっている虫を確認して、その駆除対策を実施する必要があります。
刺された虫によって、対処法や治療法が異なる場合がありますので、可能であれば実物を保管して当院に持参するか、スマートホンなどで虫の写真を撮影して記録しておくとよいでしょう。