乾癬
psoriasis

乾癬

炎症性角化症の代表的な皮膚病「乾癬(かんせん)」は、皮膚が赤く盛り上がり、銀白色のフケ(鱗屑)が多量に付着する皮膚の病気です。
尋常性乾癬には決定的な治療法がありませんが、長期的なケアによって、皮疹が表れない状態まで改善することが可能です。

原因

まだ完全にはわかっていませんが、乾癬になりやすい遺伝的素因があることは解っています。
遺伝的素因に様々な環境因子(不規則な生活や食事、ストレス、肥満、感染症、特殊な薬剤など)が加わると発症すると言われています。
欧米では頻度が高いことのほか、家族内発症が20~40%と高率であることが知られています。
ただし日本では家族内発症頻度は4~5%と欧米に比べずっと低率です。

症状

銀白色の鱗屑(皮膚の粉)をともない境界明瞭な盛り上がった紅斑が全身に出ます。
乾癬の患者さんの90%位がこの症状です(尋常性乾癬と呼びます)。
大きさ、数、形は様々で、発疹が癒合して大きな病変を作ることもあります。
できやすい部位は慢性の機械的な刺激を受けやすい頭部、肘・膝、臀部、下腿伸側などです。
青壮年期に発症することが多く、多発しますが、通常、内臓を侵すことはありません。

かゆみは約50%の患者さんにみられます。爪の変形や関節炎を伴うこともあります(関節症性乾癬)。
まれに発疹が全身におよぶこともあります(乾癬性紅皮症)。
その他、喉が痛んだ後(扁桃腺炎)に雨滴状の小さな乾癬皮疹ができる滴状乾癬、重症の汎発型性膿疱性乾癬があります。

治療法

乾癬は慢性で軽快と悪化を繰り返しますから一律な治療方針はなく、
患者さんの病気の程度、おかれた状況に応じた治療法を選択することになります。

通常、外用薬(塗り薬)からスタートします。
外用薬はステロイド外用薬、ビタミンD3外用薬が主に使われますが、各々、特性が異なります。
内服薬(のみ薬)としては、レチノイド、シクロスポリン、メソトレキサート(これのみ日本では保険適応がありません)が主なものです。
これに紫外線療法を加えた3つ(外用療法、内服療法、光線療法)が基本的な治療法です。

2010年からは、これらの治療法で十分な効果が得らえない場合、
副作用などで内服薬が使えない場合には抗体療法という新しい治療が使えるようになりました。
アダリムマブ(皮下注射)、インフリキシマブ(点滴注射)、ウステキヌマブ(皮下注射)がこの治療に該当します。
関節炎が強い場合は、痛み止めの飲み薬を使います。

また発疹の程度にかかわらず関節炎に対し、注射薬や内服薬を使う可能性が高くなります。
乾癬の治療は外用療法、内服療法、光線療法、抗体療法の4つが主なもので、これらを症状にあわせ適宜、選択することになります。
さらにこれらを同時期に組み合わせたり、1つ1つの治療を時期的にずらしたりする方法もあります。

医師が治療法を選択する場合、病気の性質が慢性であることを考えて、
治療効果と副作用(短期的なものも長期的なものも含めて)のバランスのもとに選択していることを理解して下さい。

注意点

決してうつりません。乾癬の患者さんは、発疹を見られるという意味で、周囲からの視線を意識して生活しています。
その意味で乾癬は極めて社会的な病気で患者さんの生活の質が低下しています。
この病気がうつらないという情報は極めて重要です。

日本皮膚科学会は、一般社会に対して、乾癬が決してうつらない病気であることを常に啓発しています。