眼瞼下垂
ptosis

眼瞼下垂

がんけんすいとは、まぶたが下がってきて見にくくなる病態です。その原因は、上まぶたを上げる筋肉の力が弱くなったり、その付着部である腱けんが弱くなったり、はがれたり、また、穴が開いたりすることです。症状は見にくさの他、眠そう、肩こり、頭痛、疲れる、などがあります。

眼瞼下垂は大まかに三つに分類することができます。一つめは生まれつきの眼瞼下垂、二つめは大人になってからなる眼瞼下垂、三つめは眼瞼下垂にみえるのだけれどもまぶたを上げる筋肉や腱には異状のない偽眼瞼下垂です。

患者様の症状は共通ですが、その病態によって治療法が変わってくるので、正しく病態を理解しておくことが大切です。

原因

眼瞼下垂は何らかの原因によって上眼瞼(上のまぶた)が下がってくる状態のことです。それにより上方の視野が狭く感じられたり、外見が悪くなったりする不都合が生じます。上眼瞼の挙上には上眼瞼挙筋(動眼神経支配)とミュラー筋(別名:瞼板筋、交感神経支配)の収縮が携わっており、これらどちらかの筋肉やそれを支配する神経の機能が落ちることで起こります。原因は大きく先天性と後天性にわけられます。

【先天性眼瞼下垂】

出生直後からみられる眼瞼下垂で、様々な原因によるものがありますが通常みられるものは上眼瞼挙筋の働きがうまれながら不良なことによるものです。片側性と両側性があり、片側性が多くの割合を占めます。下垂のある方の眼では、下方でしかものが見えないため、それをカバーしようとして顎をあげた姿勢をとることが多くなり、また眉毛をあげてものを見るようになります。
治療の基本は手術ですが、生後6ヶ月を超えればいつでもできるため、慌てて手術する必要はありません。しかし、眼瞼下垂の程度が強い場合、時に視力の発達に影響するため、視機能の評価や合併症の有無とも合わせて眼科を受診して手術の必要性や時期について判断してもらう方が良いです。

【後天性眼瞼下垂】

後天性で最も多いのは、加齢によるもので、上眼瞼挙筋の腱の伸展によって起こります。また、最近ではコンタクト装用者(特にハードコンタクト装用者)が増加しており、同様の原因により眼瞼下垂が起こります。
後天性ではこの他にも外傷や神経麻痺によるもの(脳動脈瘤や糖尿病などによる動眼神経麻痺や肺癌などに伴う交感神経麻痺(ホルネル症候群))、神経と筋肉の間のトラブルである重症筋無力症などがあり、これらは他の眼の症状や全身症状を伴うことも多いです。
また、一見すると眼瞼下垂のようにみえる眼瞼皮膚弛緩症(過剰な皮膚が上眼瞼を越える)や甲状腺眼症のように片眼の瞼裂開大により相対的にもう片方の眼が下垂しているようにみえることもあるため、注意が必要です。
治療は手術であり、比較的挙筋の機能の良い眼瞼下垂(加齢性、コンタクトレンズ、ホルネル症候群など)は回復が見込めます。その他の後天性では原因疾患による挙筋機能の程度によっても手術方法は異なり、その効果にも限界があります。

症状

「眼瞼下垂」の一般的な症状は、まぶたが下がり、黒目の一部が隠れてしまうため、視界が悪くなり、目が疲れやすい、というのは共通して見られます。ものが見えにくいので、無意識に顎を上げて見ようとして額に力が入る癖がついて、おでこに深いシワが寄ってしまったり、慢性的な肩こりや頭痛、眼精疲労になりやすいです。

二重まぶたの幅が広がったり、まぶたが三重になる方も多く、メイクをする時にアイラインが真っ直ぐに引けなくなったと感じる方も多いです。

「眼瞼下垂」の症状は両目に現れる方もいれば、片側だけに症状が現れる方もいます。先天性のケースはほとんどが片側のみですが、後天性の場合は、年齢とともに徐々に現れたり、脳梗塞など病気が原因で突発的に起こるケースもあります。

「眼瞼下垂」によく見られる症状

・まぶたが重く、目が開きにくい
・年齢とともにまぶたがたるむ
・ものが見えにくい
・視野の狭窄化に伴う視力の低下
・いつも眠たそうな表情に見られる
・おでこにシワが寄る
・目が疲れやすい
・ドライアイ
・眼精疲労
・頭痛、肩こりがある
・慢性疲労

治療法

眼瞼下垂を治すためにはいろいろな手術方法があります。

【挙筋短縮術】
名称の意味は眼瞼挙筋を切り取って短くすることですが、実際は眼瞼挙筋の先にある挙筋腱膜やミューラー筋を切り取る方法です。挙筋前転術とも呼ばれます。

【腱膜前転術】
ミューラー筋やその表面の挙筋腱膜には手をつけずに、瞼板から離れてしまった挙筋腱膜を元の位置に縫い付ける方法です。こちらも挙筋前転術と呼ばれます。ミューラー筋をズボンやスカートのタックのように折り返して縮める方法も同じ効果があります。

【前頭筋吊り上げ術】
眉毛を上げる前頭筋とまぶたをつないで、眉毛の動きを使ってまぶたを上げる方法です。太腿の外側の筋膜を使うことが多いので、筋膜吊り上げ術とも呼ばれますが、特殊な材料の糸を使うこともあります。眼瞼挙筋の働きが無いか非常に弱い場合に使われます。

【眼瞼皮膚切除術】
余っているまぶたの皮膚を切り取る方法です。たるんだ皮膚がかぶさっている場合に有効です。

【重瞼術】
二重まぶたにする方法ですが、他の手術と組み合わせることも多くあります。